左画面から、以下に紹介している「進行波の作成実習マニュアル」のA4版PDFファイルをダウンロードできます。
ご利用下さい。
1.進行波の作成
<目的> 波が進む原理を理解する
χ軸上の原点が、振動数f、振幅Aで単振動し、その振動が速さυでχ軸上を伝搬していく様子を再現してみます。この、振動が周囲に伝わっていく現象が波(波動)です。
原点はy=A Sin 2πft で時刻tとともに単振動しているとします。この瞬間(時刻t)の位置Xにおける変位y(χ)を表す式がy(χ)=A Sin 2πf(tーX/ υ ) で、波動方程式と呼ばれています。 これは、原点からⅩ離れた点に今到達している波の変位は、今(時刻t)よりX/υ 前の時刻(t-X/ υ ) に原点を出発した波だから、時刻(t-X/ υ )の原点の変位と同じはずだという意味の式です。
この波動方程式を使って、A=1、f=10、υ=20の波を再現してみましょう。
この作業は以下の3段階の手順で行います。
まず時刻tが変化していくようにスピンボタンでTimerを作ります。
次に位置によって時間差がある媒質の変位一覧を作成します。
最後にこの変位一覧を散布グラフ化します。
あとはスピンボタンを押せば原点から出て進んでいく波(進行波)が表現できます。
これ以降のExcel操作は2010版で説明します。
作業手順1 スピンボタンで「Timer」を作る。
右図のように、A1には「カウンター」、B1には「⊿t」、C1にはtと記しておきます。(書いてなくとも動きには関係ないが。)
後でこれから作るスピンボタンとA2をリンクするのでA2にカウント数が表示されるようになります。
B2には1カウントごとの時間間隔⊿tの数値を書き入れます。(波の周期はT=1/f=0.1 なのでとりあえずその 1/50 程度の数値、例では0.002としておきます。)
C2には「=A2*B2」という計算式を記述しておきます。
右図のように、[開発]タブから「挿入」→「AxtiveXコントロール」→「スピンボタン」をクリックしA3セル付近にドラックし右図のようなスピンボタンを貼り付けます。
[開発] タブが表示されていない場合は、
[ファイル] タブから、[オプション] の[リボンのユーザー設定]画面を表示させて、 [メイン タブ] の下の [開発] チェック ボックスをオンにします。
スピンボタンの上で右クリックし、「プロパティー」をクリックし一覧を表示し、LincdeCell には A2、Max には 10000 位(大きければ良い)を記述する。
次に今の状態が「デザインモード」状態なのでこのままではスピンボタンが動かないので、これを解除する。解除は、[開発]タブで表示される画面(右上図)の「デザインモード」をクリックしON/Offを行う。
これで、スピンボタンを使ったTimerが出来上がりました。スピンボタンを押してみてください。
「Reset」ボタンが有ると便利ですが、ココでは省略します。リセットする時は、A2に0を入れてください。
作業手順2 媒質各点の変位の一覧表を作る。
まずは右図のような波を作ることを考えましょう。(右図はt=0の時の波形です。)
波長 λ=2なので、これを10等分した⊿X=0.2間隔ごとの媒質の変位をつなげて波形を表現します。(間隔が粗すぎると波形が変になる事がある。)
右図のようにE2‘~H2に、波の諸要素と⊿Xの値を記述しておきます。
J2には0を入れます。
J3には数式=J2+$H$2
と記述し、それをコピーしてJ4~J27の縦方向に貼り付けます。
K2には数式
=$E$2*Sin(2*PI()*$F$2*($C$2-J2/$G$2)) と記述し、K3~K27の縦方向に貼り付け(コピー&ペースト)します。これは前出波動方程式y=A Sin 2πf(tーX/ υ ) をあらわしています。
<数式を記述しそれを他にコピーして使う時の注意!>
数式内で指定しているセル番地は列名をアルファベットで、行を数字で表しますが、そのまま($記号を付けないで)他のセルにコピーし貼り付けると、指定していたセル番地がコピー先のコピー元とコピー先のセルの移動分だけ勝手に変化してしまいます。(これを相対セル表示といいます)
それに対して、アルファベットや数字の前に$マークを付けると変化しません。(これを絶対セル表示といいます。)
ここではコピーしても変化しては困る振幅Aの$E$2、振動数 f の$F$2、時刻tの$C$2、速さυの$G$2には$を付け、逆に縦方向にいっしょに変化してほしい位置XのJ2には$を付けないでいるのです。
作業手順3 散布グラフで波形を表示させる。
まず、作成したXy一覧のDATA(J2~K27の範囲)を選択します。
続いて、[挿入]タブを選択し、表示されるグラフの「散布図」の下の▼をクリックし、滑らかな曲線グラフを選びます。
これで取りあえず動く波が完成しました。
グラフを適当な場所に移動し大きさを調整したものが右図です。
スピンボタンをクリックしてみて下さい。
スピンボタンを押しても「デザインモード」だとさどうしません。そんなときは、前にいちど紹介した[開発]タブクリックで表示される「デザインモード」ON/OFFボタンを押して解除してください。
<操作上の注意!>
計算式や関数が入っているセルは書き換えてはいけません。
書き換えても良いのはそれ以外のセル(右図黄色セル■)に限ります。
Timerをリセットする時はA2セルの値を0とします。
Timerを速く動かすには、B2セルの値を大きくします。
右図のように先端にゆがみが出ないようにするには、H2セルの値を小さくします。例えば、⊿Xを半分にしたら、J、K列のDATA2倍にしてグラフの元データ範囲を修正します。(修正方法は、グラフ上でクリックし表示される紫と青のデータ枠の角をドラッグすればよい。)
<考察>ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⊿tの値を
⊿t=0.01 ⊿t=0.05 ⊿t=0.098
にした時の波の動きを比較し、なぜそのように見えるのかを考えてみましよう。
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<注>拡張子[xlsm]を指定して、マクロ有効ブックとして保存しておいてください。
追加作業その1
●出始めた波の先端がX軸上を進んでいくようにするには、
K2セルの数式 =$E$2*Sin(2*PI()*$F$2*($C$2-J2/$G$2)) に条件式を挿入し =IF($C$2-J2/$G$2<0、0、$E$2*Sin(2*PI()*$F$2*($C$2-J2/$G$2)) ) と書き換えたものをコピーして、K3~K27の範囲に貼り付ける。
続いて、グラフ縦軸の最小最大値を自動(現在の状態)ではなくー1.5と1.5の固定値にするため、縦軸の書式設定ダイヤログ(右図)を表示させ最小値と最大値の固定にチェックを入れる。(多分すでにー1.5と1.5が入っているのでチェックのみで良いはず。)
ダイヤログ表示法① 縦軸の数値上で左クリックし縦軸を選択後、右クリックして出てくるリストの「軸の書式設定」をクリックする。
ダイヤログ表示法② グラフ上でクリックし表示される[書式]メニューの左上端の選択エリアリスト▼から縦(値)軸を選択し、選択エリア直下の「選択対象の書式設定」をクリックする。
ここまでの実習で作成された.xlsmファイルの見本はここをクリックしてダウンロードできます。
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追加作業その2
●縦波の進行波を表現する。(横波と重ねて表現する)
横波は媒質が波の進行方向に対して垂直方向に振動するのに対し 、縦波は波の進行方向と同じ方向に振動する波の事で、粗密波とも言う。
したがって、y軸で表現していた変位yの値をXの値に加えたX’=X+yはXを中心点としたX方向の単振動する点となる。しかしそのままの値を使うと振幅が大きすぎて粗密波のように見えづらいので、
<手順1>
まず、X’=X+y*0.18 としたX’とY’(=0)の一覧表を作成する。
また、波が通過するまでは変位yが表示されないように付けた条件式の ” ” の部分を0に書き換え、t=0のときも縦波の媒質マーカーが表示されるようにしておく。
右図の指示に従って一覧表を作成する。
<手順2>
グラフ上で右クリックし表示されるサブメニューの「データ選択」をクリックすると(データーソースの選択)ダイアログが表示されるので、
①「追加」⇒系列の編集ダイアログ表示
②系列名⇒" 縦波 "
系列Xの値⇒$L$2:$L$27
系列Yの値⇒$M$2:$M$27
③「OK」を押して確定する。(X軸上に色の違う直線が表れる)
<手順3>
まず、縦波の媒質を直線で表示するために、その元になる直線を y 軸の1に相当する位の長さの縦直線を描きそれをコピーしておく。(クリップボードに貼り付けておいて後の⑤で使うため)
直線は右図の手順で「直線描画」を選びExcel上の適当な場所に描く。斜めはダメ縦に真っ直ぐ。
① グラフ枠上で左クリックしグラフを選択
② [書式]タブ⇒グラフエリアのリストから、「系列”縦波”」を選択後その下の「選択対象の書式設定」をクリック
③ 表示される(データー系列の書式設定)ダイアログの「マーカーのオプション」をクリックし、「組み込み」→リスト最後の 図 をクリック
④ 表示されるピクチャーデータフォルダの中から適当な図を選び指定する。(.ダミーなので、JPEGや.pngなどの画像であれば何でも良い。例では目玉画像を選んだ。)
下図のように、マーカーが選んだ画像(目玉)に置き換わり変な事になるが気にしない。
⑤ 引き続き、(データー系列の書式設定)ダイアログの「マーカーの塗りつぶし」をクリックし、「クリップボード」をクリックすれば右図の下の画面のように縦波の粗密模様が表れる。
直線がクッキリしない場合、「マーカーの色」を「線なし」に設定する。
これで横波と縦波の様子が同時に表現される。Timerカウント A2 セルを0(ゼロ)にして、タイマーを動かしてみよう。
ここまでの実習で作成された.xlsmファイルの見本はここをクリックしてダウンロードできます。
<考察>ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
縦波の疎・密と横波の波形の関係はどのようになっているのだろうか。
1.縦波の媒質が静止しているのは横波のどのような所か?
2.縦波の媒質の速度が右方向最大の点は横波のどのような所か?
3.縦波の媒質の速度が左方向最大の点は横波のどのような所か?
4.縦波の媒質が最も密の点は横波のどのような所か?
5.縦波の媒質が最も疎の点は横波のどのような所か?
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●リセットするのが面倒だ。Timerを自動にしたい。!
リセットボタンや自動的に動くTimerが有ると便利ですが、VBA(ビジュアルベイシック)という言語をほんの少し使うことになるのでここでは説明しません。詳しくは「シミュレーションの作り方」ページを参照してください。
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2017.6.29